英文契約書をはじめて渡されたとき、多くの人は1ページ目から順に読もうとします。しかし契約書は小説ではないので、読む順番を変えるだけで負荷が大きく下がります。ここでは、法律英語に触れはじめた方向けに、最初の一歩を整理します。

まず押さえるのは「機能語」

法律英語で最初につまずくのは、難しい単語ではなく、意味が固定されている機能語のほうです。

shall / may / must

  • shall — 義務。「〜するものとする」。契約上の約束はほぼこの語で書かれます
  • shall not — 禁止
  • may — 権利・裁量。「〜することができる」
  • is entitled to — 権利があることをより明示的に述べる形

The Seller shall deliver the Products within thirty (30) days.

(売主は30日以内に本製品を引き渡すものとする)

shall を「〜でしょう」と読むと、義務と単なる予定の区別がつかなくなります。誰が何を義務づけられているかを拾うのが、契約書を読む作業の中心です。

notwithstanding / subject to / provided that

条項どうしの優先関係を決める語です。ここを読み違えると、結論が逆になります。

  • notwithstanding — 〜にかかわらず(他の条項を押しのける
  • subject to — 〜に従うことを条件として(他の条項に譲る
  • provided that — ただし〜(例外・条件を付け足す)

Notwithstanding Section 8, the Buyer may terminate this Agreement immediately.

(第8条にかかわらず、買主は本契約を直ちに解除できる)

hereof / hereto / herein

here- は「本契約」を指します。hereof=本契約の、hereto=本契約に対する、herein=本契約中に。the parties hereto は「本契約の当事者」です。慣れるまでは here- を「this Agreement」に置き換えて読むと迷いません。

条項を読む順番

1ページ目からではなく、自社のリスクに近いところから読みます。

  1. 当事者と定義条項 — 誰と誰の契約か。大文字で始まる語(Products, Confidential Information)は定義済みの用語なので、定義条項に戻って確認する
  2. 中核の義務 — 何を、いつまでに、どの品質で
  3. 対価・支払条件 — 金額、支払期日、遅延利息
  4. 期間・解除term / termination)— いつまで続き、どうすれば抜けられるか
  5. 責任と補償limitation of liability / indemnity)— 上限額はあるか、何を補償するのか
  6. 一般条項governing law, assignment, force majeure, entire agreement

最後の一般条項は定型ですが、governing law(準拠法)と jurisdiction(裁判管轄)だけは毎回確認する価値があります。紛争になったときにどこの法律で、どこで争うかが決まります。

頻出する20語

分野を問わず、まずこのあたりが読めれば大枠はつかめます。

  • agreement / party / term / termination
  • obligation / liability / remedy / breach
  • representations and warranties(表明保証)
  • indemnify and hold harmless(補償し、免責する)
  • confidentiality / disclosure
  • assignment(譲渡)/ waiver(権利放棄)
  • force majeure(不可抗力)
  • governing law / jurisdiction
  • entire agreement(完全合意)/ severability(分離可能性)

representations and warrantiesindemnify and hold harmless のように2語ペアで1つの意味になる表現が多いのも法律英語の特徴です。片方だけ知っていても意味が取れないので、ペアのまま覚えます。

契約書以外もほぼ同じ土台

訴訟(plaintiff / defendant / discovery)、会社法(shareholder / board of directors / fiduciary duty)、知的財産(infringement / license / royalty)と分野は分かれますが、機能語と文構造は共通です。契約書で土台を作ってから分野を広げるのが遠回りに見えて早いです。

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